■包丁の用途 ■刃の構造 ■はがねとステンレス鋼 ■柄の構造

■洋包丁は肉料理向き、和包丁は魚・野菜向き

包丁には、洋式と和式、それに中華式があります。用途に応じてそれぞれに数多くの 種類がありますが、家庭用の包丁としては、三徳、牛刀、ペテ、パン切り、冷凍ナイフなどの洋包丁と、 出刃、柳刃、薄刃、菜切りなどの和包丁が一般的です。
各包丁ごとに様々な特徴がありますが、主に、洋包丁は肉料理向き、和包丁は魚や野菜料理向きにできています。

■洋包丁は切れ味が永持ち、和包丁は極めて鋭利

包丁の刃の構造
和包丁の刃は、片側だけを大きく削りこんだ片刃が多く、洋包丁は両側を削りこむ両刃になっています。

和包丁の片刃は、刃の硬度が高く、刃先が非常に鋭利で、しかも研ぎ易い優れた刃ですが、刃こぼれし易いという性質もあります。 この型の刃は、軟鉄(地鉄)に鋼を合わせた地付という構造になっています。なお、和包丁にも一部両刃のものがありますが、これは軟鉄に鋼をさし込んだ 割込という独特の構造に造られています。

洋包丁の刃は全鋼で、粘り強い特徴があります。 また、両刃なので、切れ味に片刃の和包丁ほどの鋭さはありませんが、片刃より切れ味が永持ちするため、家庭用包丁の主流になっています。 なお、包丁には、鋼をステンレスではさんだステンレス割込という構造のものもあります。

■はがね(炭素鋼)とステンレス(クローム鋼)

一般にはがねと呼ばれている材質は鉄の中の炭素が0.5~1.2%程度含まれ、ほかの元素が含まれていません。切味は大変良いのですが錆びます。 ステンレスは炭素以外に錆びない成分としてクロームを含有しています。このクロームの多少で錆びにくさがちがいます。 しかし焼き入れができるようにスプーンやフォークのステンレスと成分が異なりますので、絶対錆びないというわけではありません。 はがねより硬度は低くなりますので、刃持ちは悪くなりますから、研ぐ回数はひんぱんになります。

最近は両方の長所をとったステンレス割込鋼といった複合材料も使われています。一般的に、腕の良い鍛冶は、ステンレスをきらいますので 良い包丁は、はがね製となり、ステンレス製は工場生産品になります。しかし良く切れるステンレス鋼も最近、宇宙開発の副産物として開発されています。

ステンレスは洋包丁だけでなく和包丁にも使われています。一年に2、3度しか使わない柳刃や出刃は錆びることを考えれば、ステンレス製がお得かも知れません。

■代表的刃物鋼材

鋼材名 成分(%) 実用硬度
(RC)
炭素 クローム タングステン モリプデン


白紙1号 1.3~1.4 60~62
青紙1号 1.3~1.4 0.3~0.5 1.5~2.0 60~64





銀紙1号 0.8~0.9 15.0~17.0 57~58
440 C 0.95~1.2 16.0~18.0 58~59
ATS34 0.95 14.0 4.0 60~62

(日立金属『ヤスキハガネカタログ』より)

■柄の構造

◇和式

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和包丁の柄は、刃に続くナカゴを、柄に焼き込んでしっかり固定した、差し込み式の構造になっています。 柄の材料は普通朴(ホウ)の木で、口金は真鍮やプラスチックが一般的ですが、高級品は水牛の角が使われています。差し込み式の和包丁の柄は 交換可能ですが、ナカゴが腐食していると交換できません。 柄の穴に水が入らないように、未使用のうちに接着剤を流し込むと永持ちします。

◇洋式

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洋包丁は、刃の部分、ツバ、タング(柄の芯になる部分)が一枚の鋼材からできています。柄は、タングを木などの材料で両側からサンドイッチ状にはさみ、ボルトでとめた構造で、 頑丈なことが特徴です。高級品には口金がついたものもあります。