こだわりたい、もっとも身近な刃物―意外に知られていない爪切の秘密

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どこのご家庭にも二つや三つはある爪切り、もっとも身近な刃物ですがなかなか良いものと出会えないと言う方も多いのでは。
刃物店の店頭でももっとも慎重に選ばれている姿を拝見するのが爪切りです。
*きれいに切れないとイライラする!
切れ味がこんなにはっきりわかる刃物はほかにありません。
切れない爪切できると、パチンと切れず爪をつぶすように引きちぎるように切ったり、ぎざぎざになったり、 爪に響いたり、指がしびれたりして使うのがいやになります。
私たち加盟店も切れる爪切を常に探し求めています。

*爪切の四つの型

爪切は大きく4種類に分けることができます。お使い方により使い分けをすると便利です。

A.クリッパー型

もっとも多く使われなじみ深い形です。安価でコンパクトです。 景品でもらうような安いものから数千円もする高級品まで多くのモデルがあります。

B.ニッパー型

工具のペンチのような形をした少し大型の爪切です。ヨーロッパではこの爪切が主流です。 足の爪を切るのに適しています。また力が少なくても爪を切れますので調節がやり易いのも特長です。

C.洋鋏型

普通のはさみのような形をした爪切です。最近余り使われなくなってきましたが、 これでなければと言う方もいらっしゃいます。また赤ちゃん用の爪切は先が丸くなった専用の鋏があります。

D.和鋏型

現在ではほとんど忘れられた存在になっていますが、お年よりの方にはまだお使いになられている方もいらっしゃいます。 ずんぐりした形の刃で力が入るようになっています。

次にそれぞれの型の爪切についてもう少し詳しく。

A.クリッパー型

上の刃と下の刃は合っていない?

tume_02上下の刃で爪を挟んで切るクリッパー型はその種類も多く、値段も大きさもいろいろです。 すぐ切れなくなったり、パチンと切れなかったり、爪に響いたりとなかなか気に入ったものが見つからないのもこの型です。 ではどんな爪切を選べばよいのでしょう。

tume_03クリッパー型の上の刃と下の刃は刃を閉じたとき、どちらかの刃が前に出ています。 上下の刃がピッタリ合っている方が切れるように思われますが、刃がぶつかることによってすぐにつぶれてしまいます。 わずかに刃がずれていることにより刃が長持ちします。特許でしたので以前は一社だけでしたが、現在はほとんどの爪切がこの構造です。 (左写真)上下の刃を閉じた状態で、爪で刃をこすってみると刃がずれていれば爪が引っかかります。

クリッパー型はてこの力で爪を切るので、大きい方が力は少なくても切れます。 小さい爪切は旅行時などの携帯には便利ですが、ご家庭内でお使いになる場合は大きいものをお奨めします。 力が要らずどなたでもお使いになれ、どこかへ行ってしまうこともありません。

爪が飛び散らない爪切

tume_04最近ではほとんどのモデルが爪が飛び散らないようにカバーをするようになりました。 お部屋の中でも安心して爪を切ることが出来ます。

tume_15当組合加盟店で取り扱っているクリッパー型爪切は自社ブランド以外ではワンドールヘンケルス、グリーンベル、フェザーパラダ、貝印などです。(左写真)
値段は1,000~2,000円が多いように思われます。
国産の爪切は世界最高水準の技術と切れ味を誇ります。刃の形も一般的な反り刃以外に直線刃があり、斜め刃、幅の小さい刃、ルーペ付きなど多種多様です。

アイダ爪切りー製造中止の稀少品

tume_06東京は高級刃物の産地で東京刃物工業組合という職人の組合があり東京都指定の伝統工芸士もいます。 爪切も戦前から生産されていた高級品でしたが、環境が激変し工場を維持することが不可能となり、1999年末を持って生産を中止しました。 今でも探されている方がいらっしゃるほどです。特に大型の爪切は他に同じようなモデルが無く、人気がありました。

*クリッパー型爪切は研ぎ直しできません。

クリッパー型爪切はその価格や構造上研ぎ直しをすることはできません。新しい爪切をお求め下さい。

B.ニッパー型

変形した足の爪にはこれしかない。

tume_07ペンチのような形をしたニッパー型爪切は欧米ではもっとも普及している形です。 とくに足の爪を切るのに適しています。  刃の先端の細くなっている部分で爪を切ることが出来るのがクリッパー型ともっとも違うところです。
刃に右左の区別がありませんので、どちらの手でもご使用できます。 反り刃、直刃そして食い切り型があります。クリッパー型に比べて非常に長持ちし、長年にわたってご使用いただけます。

巻き爪、喰い込んだ爪、厚く変形した爪でお悩みの方に

現代人の大きな悩みに足の爪があります。変形した爪を切るのは痛くて大変です。 このような爪を切るのにこの分野での先進国であるヨーロッパではいろいろな爪切が考案されています。 これがニッパー型爪切で、欧米人の厚い固い足の爪はこの型で無いと切れません。 ニッパー型は刃の細くなった先端を使うことできます。 爪の内側に片方の刃を差し込み、少しずつ爪を切ることが出来ます。 このためクリッパー型では痛くて切れなかったような爪も楽に切ることが出来ます。 また厚くなった爪を削り取るように切ることも可能です。

究極の足の爪切――直刃ニッパーが売れています。

tume_08とくに従来の常識をくつがえす刃が反っていない直刃型のニッパーは刃の先端が薄く細く作られており、 切れ味が良いため巻き爪や食い込んだ爪には最適です。 お店の方にご相談ください。 

左右の刃を閉じたとき、両方の刃の間に隙間があります。

tume_09刃を閉じて透かして見ると両方の刃は先端だけが合って、元の部分は隙間が空いています。 この隙間は先端に力が入るようにわざと作った大切な隙間で、不良品ではありません。 ハンドルを力いっぱい握るとやっと元の部分まで刃が閉じます。

爪以外の電線などは切らないで下さい。

爪切の刃は爪を切ったとき指に響かないように、わざと焼入れの硬さを落としています。 このため電線などを切ると刃がつぶれてしまいます。 刃がつぶれてしまいますと研ぎ直しができません。充分ご注意ください。

tume_10バネがハンドルの間についています。バネの形は色々ですが、使わないときは刃が閉じたままになるように横にずらすことが出来ます。バネは永く使用しているとときどき外れたり、折れたりしますが、加盟店にお持ちいただけば交換することが出来ます。

なお、爪切ニッパー、甘皮ニッパーなど理美容刃物のお研ぎ直しは難しく、各店舗の製作者が研ぎ直しをしますので、他のお店で購入された刃物は受付がむずかしくなります。
最新の爪切ニッパーは切れ味も驚くほど良くなっていますので、新しく買い替えることをお勧めいたします。

C.洋鋏型

tume_11普通のはさみの形をしていますが、刃先が厚く、反っている爪切専用になっています。 ドイツ・ゾリンゲンで作られた爪切鋏の中には、爪ヤスリ兼用のキャップがついた鋏(最左)、赤ちゃん用の先が丸くなった鋏(左から2番目)など特長のある爪切もあります。 現在は余り使われなくなっていますが、使い馴れている方はまだまだいらっしゃいます。

D.和鋏型

tume_12洋式の鋏が入ってくるまでは爪も和鋏で切っていました。 お年寄りの方はまだ和鋏をお使いになっている方もいらっしゃいます。普通の形の和鋏を爪切としてお使いになる方も多いのですが、 写真のように刃の部分の巾が広くなっていて力が入るようになった形の「おたふく」型という和鋏が爪切としても使われています。

爪切をご使用になるときのご注意

いずれの爪切をお使いになっても爪を切るときは次のようなことにご注意ください。
1.厚い爪、変形した爪は、お風呂に入った後、爪が柔らかくなっている時にお切りください。
2.爪が飛び散らないよう新聞紙などを広げた上でお切りください。
3.飛び散った爪が目に入らないよう、特に小さなお子様のいるところを避けてください。
4.ご使用後、爪垢などが刃に残っていると不衛生ですので、ティッシュなどで刃を拭いてからしまってください。
5.爪切は刃物です。特にニッパー型は小さいので無くし易いものです。小さいお子様の手の届くところには放置しないで下さい。
6.爪以外のものを切らないで下さい。 電線やコードを切ると爪が切れなくなります。

爪を切った後は爪ヤスリで角をとりましょう。
爪切で切った後は爪に角が残ります。このままではストッキングが引っかかったり、靴下に穴があいたりしてしまいます。
爪ヤスリで角を取りましょう。
爪切についているヤスリもありますが、短くてちょっと使いにくいものです。
専用の爪ヤスリを用意しておくと気持ちよく爪の仕上げができます。

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昔からステンレスの板に縞模様を刻んだヤスリがありますが、サファイヤの粉末を蒸着した爪ヤスリが現在の主流です。
方向性が無く、どの方向にこすっても爪を削ることが出来ます。またほとんどのサファイヤヤスリは表と裏で粗さが違っていますので使い分けが可能です。
水で洗うことも出来ますので衛生的です。
写真一番下はガラス製の爪ヤスリです。
ご家庭でお使いになる場合は10センチ程度の長めのヤスリが使い易いようです。
変形したり、厚くなった足の爪はニッパーと爪ヤスリをうまく使い分けたほうが良い場合もあります。

text by 井上武(銀座菊秀)